イノベーション&チャレンジデー 特別対談 「大阪駅発!リアル×メタバースの可能性」

〇第2部 パネルディスカッション

第2部のパネルディスカッションでは、冒頭、伊藤副社長にバーチャル大阪駅の概要とこだわりについて語っていただいた後、JR西日本コミュニケーションズの秋友部長を司会に、リアルとバーチャルにおける新しいメタバースの可能性について深堀りした。

【伊藤】:バーチャル大阪駅の概要

 バーチャル大阪駅のこだわりの1つ目は、リアルの大阪駅を忠実に再現したことです。例えば券売機でICOCAを受け取り、改札にてそれをタッチして駅構内に入場するといった仕組みまでも再現しました。こだわりの2つ目は、バーチャルを活かした未来体験を演出したことです。疑似現実のみならず疑似未来も体験できるよう、2023年春開業の大阪駅(うめきたエリア)に設置されるフルスクリーンホームドアを再現しました。こだわりの3つ目は、現実世界では実現不可能な体験を取り入れたことです。例えば、大阪駅の大屋根で滑り台を設置したりしました。こだわりの4つ目は、リアルとバーチャルのコラボイベントを展開したことです。リアルとバーチャル双方にVTuberコラボカフェを設置し、そのどちらでも集客が図れる座組を構築しました。

 その結果、メディアでも多数取り上げられ、JR西日本としてのメタバース施策が大きな脚光を浴びる結果となりました。今後も、豊富なリアルアセットを基軸に、あらゆるXR技術を活用の上、地域・お客様との協創により弊社の魅力を発信し続けていきたいと考えている次第です。

 

 

【秋友】リアルとバーチャルを融合させることを大きな目的とした「バーチャル大阪駅」ですが、同様の取り組みは、HIKKY様の中でこれまであったのでしょうか。

【舟越】小規模ではありましたが、ここまで大規模で展開したのは初めてです。これはJR西日本の場所の力と・それを運用する力が備わっていないと簡単にはできないと考えています。

【秋友】「バーチャル大阪駅」の取り組みに関する率直なご感想をお聞かせいただけますでしょうか。

【舟越】今回、JR西日本からのアイディアも取り入れながら、「まずやってみたらどうだろう」という精神の下、共にチャレンジさせていただき、成功したことは素晴らしいと考えています。遅くとも来年(2023年)あたりには、リアルとバーチャルをさらに融合させた展開が本格化してくるとの肌感覚を持っています。その展開を円滑にするソリューションも複数台頭してくると推測しています。

 この潮流を見据え、リアルビジネスをやっている事業会社は、どうやってリアルとバーチャルを融合させることができるかを考え、先んじた行動をしていくことが大切だと考えています。その中でも、駅や電車は非常に魅力的なIP、つまり、何も説明する必要がない位に分かりやすいものです。他社との連携により、その価値がますます発揮されるものになると考えています。

【秋友】XR領域における技術革新が進んでいるが、それらが成熟するのはどれ位先の未来と考えていますでしょうか。

【舟越】メタバース業界における一般論としては、ここから5年先位になると言われています。一方、私は 来年(2023年)の後半には大きく進展するものと考えています。それはメタバース業界の方々の、驚くほど加速度的な数多くの取組みを目の当たりにしているからです。

【秋友】リアルとバーチャルの融合によるメタバース施策実施により、お気づきになられた点はありますでしょうか。

【伊藤】良い面は2つあります。1つ目として、鉄道会社としての駅のポテンシャルは非常に大きいと感じました。バーチャルの入り口が駅であるという構造はお客様にとっても非常に分かりやすいです。2つ目は、リアルとバーチャルの相互移動による可能性を感じました。リアルとバーチャル共に設置した「コラボカフェ」に関しては、リアルの方では3時間待ちも発生し、大変大きな反響を感じました。一方課題としては、やはり技術面です。アバター接客等によるショップ販売等の施行はできなかったことなどが挙げられます。ゆくゆくは、toBではなく、toCに対するビジネス展開も画策していきたいと考えています。

【秋友】メタバースの開発スピードが停滞してきているのではないか、という質問がありますが、こちらに関してどのように考えますか。

【舟越】アメリカなどの外国での子供へのプレゼントとして、ヘッドセットが非常に人気です。個人的には、新規事業でデバイスを作って市場を取るような企業はすごいと思います。色々な人が色々なことを言いますが、今後メタバース等で事業展開を検討するのであれば、XR企業の1つひとつをしっかり自分の目で確かめ、「リアル」を捉えて欲しいと考えています。メタバースと呼ばれるジャンルの要素をしっかり分解し、例えば、リアルアセットが他社に比べてどれくらい優位性を保っているか、その中のコンテンツがどれ位普及しているかなどを見て欲しいと考えています。

【秋友】バーチャル大阪駅に来場されて、客観的にどのように感じましたか。

【積】電車の足元までしっかり見えたりと、とにかく作り込みがすごいというのが率直な感想です。

【秋友】バーチャル大阪駅の改善点など、お気づきの点があれば教えていただきたいです。

【積】例えば今回のバーチャル大阪駅でいえば、「大阪駅」から「関西空港駅」にすぐに行けるなど、移動にペインを抱えているお客様が一定数いることが想定される中、目的地が迅速に繋がる世界があることは素晴らしいと感じました。一方、移動をメタバース上で完結させるのではなく、リアルとの掛け合わせを意識した取り組みがあると尚良いと感じました。